かんまんこうろうひ・はてなブログ編

はてなダイアリーとはてなブログの違いが全くわかりません

ダルタニャン物語の第2巻を読んでみた

 なんか予想してた勧善懲悪ものとは違うなぁ……。一応、タイトルにもなってるミレディが本作の悪役なんだけど、彼女と対峙するダルタニャンや仲間たちの態度も結構、いやかなり非道いw。人形劇でもやった、ダルがミレディと関係をもった挙句捨ててしまうというのが原作準拠だったとは!他にも丸腰のミレディを脅して枢機卿の赦免状を無理やり取り上げるとか、イギリスで捕縛した彼女を必要以上に言葉でなぶるとか……しばし、どちらが悪役がわからなくなったくらい(^^;)。最後の対決も女性一人に対して大の男が5人がかりで無理やり私的裁判→問答無用に処刑だし(ある意味、戦隊と同じフォーマットw)……これは、女性相手に剣と剣を交えて倒すわけにはいかないという当時なりの作法意識だったのだろうか(^^;)?そういえばポルトスの恋人・コクナール夫人に対する態度もかなりちょっと精神的DVが入っている感じなんだよなぁ。むしろ物語中盤は男たちに翻弄されるただ中になって、己の美貌と才覚のみをより頼んで只一人の力で状況を切り開いていく悪役ミレディの方にこそ感情移入してしまうほどであった。先に触れた人形劇始め、後世の翻案作で彼女のリスペクトが顕著な理由がこの完訳版を読むとよく判る(峰不二子のモデルもミレディなんだっけか、確か)。
 リシュリュー枢機卿が女スパイのミレディに命じてイギリスの権力者バッキンガム公爵(人格者であるが、フランス国内の反体制派を煽る張本人にして、王妃アンヌの不倫相手)の暗殺を企み、ダルタニャンと三銃士がフランス国内で反乱軍と戦いながらなんとか外部と連絡をとってそれを阻止しようとするというのが今回の粗筋であるが、リシュリューはバッキンガム一人の命を犠牲にすることによってフランス国内の不毛な内乱を終わらせようとしてるのであって*1むしろ三銃士が戦争の早期解決を妨害する側じゃん。彼らにしてみると戦況云々は全く関係なく、バッキンガムが敵国人でありながら色々お世話になった知己だからなんとか助けようとしたのではあるが(結局、ミレディが見事に彼らを出し抜いて暗殺を完遂させる)、この巻のリシュリューを「悪役」とするには「銀河英雄伝説」などを読んでる私の感覚からすると極めて抵抗感もあったw。もろもろの私怨も込めて悪女ミレディーは倒した一方で、同じく枢機卿の命を受けて動いていたもう一人の宿敵・ロシュフォールとは完全和解、無二の親友となりましたってオチもなんだかなぁ。

*1:作者も劇中で「枢機卿は極めて進んだ政治感覚の持ち主」とか表記している。