かんまんこうろうひ・はてなブログ編

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グインサーガの122巻目を読んでみた

 まんまオフィーリアなシルヴィアちゃんw。

豹頭王の苦悩―グイン・サーガ〈122〉 (ハヤカワ文庫JA)

豹頭王の苦悩―グイン・サーガ〈122〉 (ハヤカワ文庫JA)

 シルヴィアが産み落とした赤子をハゾスは殺すことが出来なかった。結局子供はローデス公の手に委ねられどこへとも知れぬ僻地へと旅立って行く。シルヴィアの淫行を最小限の醜聞に留めたいハゾスは、彼女を愛慕する馬丁のパリス只一人が密通相手だったように仕向けようとするが、シルヴィアは何もかもをグインに告白してしまう。自分が妻に出来ることは何一つないと悟ったグインは、永遠の別離をシルヴィアに告げるのだった。

 前もって破局するって知らされてて良かったようなそうでないような。知らずに読み進みていたらかなりキツかったろうな……コレw。何が良くなかったのか当人達にも周囲にも読者にもそして(ひょっとしたら)作者にもわからない破局。単なる男女のすれ違いとするには、まさかの夢での遭遇やよもやの記憶喪失などの運命の悪意的な要素も目立ったし、巡り合わせの不幸とするには、それを乗り越えようとする姿勢も相手を求める言葉もお互いに足らなすぎた。結局のところ、恋愛と結婚は別物だから、に帰着するような気もする。ホント、こんなの読むとますます結婚する気なくすよ……相手もいないけど。

 いや~~~(作者ものたまってたけど)陰惨な巻だった。リーロが殺された頃やアムブラ弾圧編もそれなりだったが、リーロの死の描写は一瞬だったし、アムブラの話はなんだかんだでヴァレリウスはナリスと禁断の果実を食することに淫していた……と思うのねん。それが、今回は誰一人被虐の歓びすら感じている者もいないし。舞台はあのケイロニアっていうことである意味パロやゴーラよりもさっぱりしていた印象のあった分、ドツボに落ち込むとより胸蓋がるような。ハゾスさんは真面目で忠誠心も強い分、いざという時には逡巡すらしない。その姿勢はある意味正しいのだろうが(イズァローン伝説の「真の臣下は主君のために鬼畜になれる」って言葉思い出したわ)……やっぱりドン引きだ。目の前の赤子*1だけは殺せなかった……というのが、ギリギリの、本当にギリギリの妥協だったのだろう。真面目って怖いな。うん、自分は不真面目で良かった。心からそう思った。
 決定的な一文も書かれちゃいましたねえ。これがケイロニア王グインと王妃シルヴィアがこの世であいまみえた最後であった、って!まさに、ああ~っ(泣)ですよ。七人の魔導師篇ではあんなことになっており、その後「売国妃シルヴィア」なんてことにもなる予定だったらしいけど、それでもまだグインとシルヴィアの「それ以降」が描かれる可能性は残されていたというのに。仮に最終巻まで執筆が続けられていたとしてもうこの二人が仲直りすることはなかったのね……。あのケイロニア入門編の頃のグインとシルヴィアがワルツを踊って、グインが「愛の殺し文句(!)」をしれっと連発していた頃が懐かしい(涙)。グイン曰く「自分が支えてやらなくては、と思える者が愛おしい」ということであったが、この後くっつくヴァルーサってわりとしっかりした女性だったような気がするのだが……。

 不幸なシルヴィアの赤子の名前はシリウス(読んだことないけど伊集院大介シリーズの敵役と同じ名前でんがな)。もう表舞台に登場するのは許されないみたいな描写だったけれど、わざわざオッドアイという設定にしたのは、その後再登場したときにすぐにその出自がハゾスに悟られるように……というつもりだったのかな?やはり。

*1:目の前に居なかったら、処分命令だけだったら、下せたような気がするんだな。ナリスみたいにさ。