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グインサーガの83巻目を読んでみた

嵐の獅子たち―グイン・サーガ(83) (ハヤカワ文庫JA)

嵐の獅子たち―グイン・サーガ(83) (ハヤカワ文庫JA)

 イシュトヴァーンは強引にナリスの援軍として参戦したが、ナリス側の反応は芳しくなかった。諸外国から白眼視される状況に苛立つ彼の軍勢に突如襲いかかったのは、愛妻の仇討ちに燃えるスカールの一団であった。熾烈な一騎打ちは終始スカールが圧倒するが、自身の不利を悟ったイシュトが逃走したことで本懐は遂げられず。図らずも独りきりとなったイシュトヴァーンの前に現れたのは、レムスの姿を借りたヤンダル・ゾッグであった。

 そりゃまあ、イシュトヴァーンの自業自得なんだけどさ……。

 イシュトヴァーンと組めないのは彼が「裏切る」からと云い切ったグイン*1。しかし、この物語世界に於いて、自分こそがイシュトに十字架を最初に負わせた(「アルゴンのエル」の件)張本人であるということを、グインは覚えているだろうかね?確かに、以降その道を選び続けた(アリのやり方を黙認のち責任を押し付けて切り捨てた、勝手にタルーからタリクに鞍替えした等)のは他ならぬイシュト自身なのだが……。これまでの道程に於いて、イシュトの何が決定的に良くなかったのだろう?アリを参謀に選んだことか?それとも身の丈に合わぬ地位を望んたことか?
 「運命共同体」の筈が、イシュトを受け入れるわけにはいかなくなったナリス陣営。まあマルガの一夜以後、イシュトがやらかしたあれやこれやのことを思えば当然の対応ではあるが。しかし、当初イシュトヴァーンに、世界を暗黒の時代に叩き込む使者としての期待をかけていたのは他ならぬナリスではなかったか?それがいつの間にか、ヤンダル・ゾッグの中原侵攻を阻む筆頭になってしまっているのだから……。人の、いやキャラクターの運命というものは判らない。ヴァレリウスにとってもいつしか反乱が「絶対に負けてしまう戦い」から「絶対に負けられない戦い」に替わってしまったし。あれ?いつしかナリスがヤンダルのせいで相対的に正義の味方っぽくなってしまってるぞ(棒読み)。
 約60巻ぶりについにイシュトヴァーンに復讐の刃を振りかざしたスカール。忘れてたわけじゃなかったんだ……。さすがの魔戦士イシュトヴァーンもスカールとは力の差はあるようで。しかしインパクトがあったのは二人の死闘よりも、その直後のヴァレリウスとスカールの丁々発止。二人とも一歩も引かずに戦場のただ中でよくしゃべるしゃべる(笑)。至上とするものが異なる以上、完全に平行線になってしまうのはしょうがないが……。でもあのタイミングでヴァレリウスが出てきたのは偶然か?イシュトを殺させない程度に、牽制目的でスカールがゴーラ軍を襲うのを黙認していたようにも見えるのだが……。ま、いいか。

 読み方、意味を調べた漢字。等閑、とうかん、もしくは、なおざり。等閑に付す、いい加減に扱うの意。深讐綿綿、しんしゅうめんめん。深讐は深いうらみ。綿綿は長く続くこと。膂力、りょりょく。筋肉の力。

*1:それでも個人的には彼のことを嫌いではないとも云ったのが救いではあるが……