グインサーガの81巻目を読んでみた
この巻のクライマックスになぜか違和感を覚えた私。感想を書いている今もなお、その原因を探っているような感覚です(なぜかはっきりとした理由が掴めない)。
- 作者: 栗本薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/10/01
- メディア: 文庫
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
謎の竜騎兵によってパロ領内へ誘い込まれたイシュトヴァーン軍は、あわやグイン率いる精鋭とニアミスするものの、グインの機転によって両軍の衝突は避けられた。アルゴス以来のレムスと再会したグインは、彼が完全にヤンダル・ゾッグの支配下にあるわけではないと悟り、リンダに逢うため敵の本拠地クリスタルパレスへの訪問を希望する。
ヤンダル「オレが手を引いたら、レムスはナリスを殺してパロは闇王国になっちゃうよ?いいの?」
グイン「いいんでない?それはパロ人が選択した結果だし」
ヤンダル「お前は中原の平和のために兵を挙げたんじゃないのか!」
グイン「ケイロニアにコトが及ばなければ別にいいし」
ヤンダル「んな勝手な」
グインとヤンダルの大舌戦。主人公と魔王の初の対決……なのだが、ヒーローが「ああ云えばこう云う」形で悪の親玉を退ける場面になってしまっているぽい(あくまでも「ぽい」ね)のがちょっと……(汗)。グインの弁舌は詭弁と云ったらものすごく詭弁に聞こえなくもないのだがw。ヤンダルの侵略さえなければ、パロがキタイの血をひく(と劇中では云っていたが、事実上ヤンダルの尖兵じゃないのかね)アモンを王太子に立てて暗黒王朝を開こうとも、それはパロの人々が自身らの意思のままに選んだ歴史の流れなので、あくまで隣国の王に過ぎないグインとしては干渉する気はない、と。「ただ、そうなったらレムスとアモンは100%中原征服に乗り出すだろうから、ケイロニアとしてはどちらにしても兵を出すことになるんだけどね」とまでは口にださないだけで、モノは云いようである。イシュトヴァーンも居ることだし、ヤンダルが出ようが消えようがもはや中原全体の流れは戦乱に向かって一直線であるのは間違いなく、グインの「ケイロニアに影響なければ不干渉主義云々」は全く意味がないはず(そしてそれを読めないグインではあるまい)。……なのに、ヤンダルは言い負かされる形で消えちゃうしさー。(「ナリスを殺せない」という痛い部分を突かれたというのもあったろうが)これはちょっと悪の親玉として情けなくない(^^;)?グインが「絶対の正義などない」と云うのなら尚更、(66巻のナリスとスカールのような)正面きって互いの義をぶつけ合うような対決が読みたかった……。
もうひとつ違和感の話。グインは「キタイで竜の兵隊を見た」「かつて逢った魔導師たちグラチウスやイェライシャ、ロカンドラス……」と云っていたが、外伝でグインはヤンダルの手下とは戦わなかったし、ロカンドラスとも逢っていないはず。いつかのタリクの描写と同じく、栗本先生忘れちゃってた!?
グインとレムスが、かの逃避行の日々以来の再会。しかし、荒野で海で草原で、運命共同体として助け合った、少年と彼を守った戦士はもうどこにも居ない。当人同士、もしくは男ならばそれを成長の結果として受け取るのかもしれないが、読者でしかもおなごの自分は、やっぱり寂しいと思ってしまうのです……。
読み方、意味を調べた漢字。謦咳、けいがい。人が笑ったり話したりすること。