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グインサーガの99巻目を読んでみた

ルードの恩讐―グイン・サーガ〈99〉 (ハヤカワ文庫JA)

ルードの恩讐―グイン・サーガ〈99〉 (ハヤカワ文庫JA)

 記憶喪失を隠しつつ、グインはイシュトヴァーンとの会話から何とか以前の自分に関する情報を集めようとするが、イシュトはこの度の反乱が実はグインの策略ではないかと疑い烈しく追求する。彼が聞く耳を持たぬと悟ったグインは反乱軍の虜囚たちと一旦はゴーラの陣から脱出するが、逃げ切れず再び捕まってしまう。もはやイシュトヴァーンはかつての友グインを敵としか見なしていなかった。

 実は殆ど忘れてしまっているのに上手く会話を合わせるグイン……器用なやっちゃ。

 イシュトの疑り深さはどうしようにないにしても、もしこの時グインが記憶喪失でなかったら、イシュトヴァーンを取り巻くもろもろの事情を把握した上で、彼の不安と焦燥を受け止めあるいは流してむしろ良い方向に事態を進ませることも可能だったかもしれない……。が、あいにくグインは記憶喪失の真っただ中。流石に様子は変だし、これで全く疑うなというのもイシュト側にとっては無理というものかも。グインワールドの定番だが、これまた間の悪すぎる展開です……。
 グインはイシュトのことを「とにかく怒りを発したい病」であると分析したが、外伝のヴァラキアの少年時代にて、高級住宅地を駆け抜けながら貧富の差に怒りを覚え、この理不尽への激情こそが後の狂王としての彼の礎となったとの記述がありましたな(そういえば「理不尽を受け入れることができる」ことが生き死にする者たちの最大の強みである、とグインがアモンに向かって言い放った展開もあった)。罪悪感によって夜毎うなされる亡霊たちについても「なんで俺がこんな連中に苦しめられねばならないんだ」という憤りに転化するのだろうね。で、さらに殺戮に手を染める、と。まさに悪循環。ドリアンを恐れるのは、単にその子がイシュトの罪業の象徴だから?それともその赤子と向き合うことで、幼少の頃から自身に欠けていたものを自覚するのがたまらないから……とか?

 いよいよ次で100巻目。ついにここまで来てしまったということですかね。巻数的な意味でも、局面的な意味でも。グインとイシュトが和やかな雰囲気になるのは……もう今度こそ、2度と、無い?